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ブラジルに滞在している間、私の観光案内を買って出てくれたのは、伯母さんの友達のイソカワさん(仮名)だった。当時、伯母さんの家には車が一台しかなく、その車を伯父さんが使っていて移動するのに不便だったため、イソカワさんが車を出してくれていたのだ。
イソカワさんは、ブラジルに住んで30年になる。 ポルトガル語も堪能だ。 新婚早々に縁もゆかりもないブラジルに住むことになったイソカワさんの、旦那さんからのプロポーズの言葉は、「一緒にブラジルに行こう。」だったそうだ。 イソカワさんの旦那さんは日系船会社の船員さんで、当時は一年の半分ほど家を空けていたので、慣れない土地で一人ぼっちのイソカワさんは、随分と苦労されたそうだ。 3人のお子さんは、血は100%日本人でありながら、幼稚園から大学まで、ブラジル人と同じ学校へ通ったため、文化や考え方は100%ブラジル人だった。 顔は日本人なのに、カッコよくサンバを踊り、甘ったるいケーキや脂っこいピザをおいしそうにほおばる。 しかし、イソカワさんが、将来日本の社会の中でもやっていけるようにと、家の中では日本語で話すことを徹底したため、彼らは、美しく自然な日本語を話していた。 イソカワさんは、まるでわたしを身内であるかのようにかわいがってくれて、忙しい合間を縫っていろいろな場所に連れて行ってくれた。 中でも一番印象に残っているのが、マンゴスチン畑だった。 マンゴスチンは、りんごのように木になる果物で、赤く分厚い皮の中の白い果肉を食べる果物だ。 味は甘酸っぱくて、食べやすい。 私は勧められるがままに、もぎ取ったそばからかぶりついていた。 おいしい果物に惹かれるのは私だけではないらしく、時折、例の刺すアリにも出くわすことがあった。 アリがついていた場合には、もったいないが、危険なので、その場で投げ捨てるように言われた。 また、木と木のあいだのところどころに、アリ塚があったが、それにも絶対に触らないように注意された。 ここでは、人間が自然に従わなくてはならないのだ。 農家の方の話によると、マンゴスチンは木によって味が全く異なるのだという。 甘い木もあれば、酸味の強い木もある。 また、樹齢が高いほど甘みが強く、若い木ほど酸味が強いのだそうだ。 だから、マンゴスチン狩りは、自分好みの酸味と甘みのバランスの木を見つけることが醍醐味でもあるのだそうだ。 お邪魔した農家には、マンゴスチンと同じ味のするランプータンという果物の畑もあった。 赤い皮には、もじゃもじゃと赤い毛のようなものが生えていて、マンゴスチンと同じように、皮の中の白い果肉を食べるのだ。 マンゴスチン狩りを満喫していると、突然スコールがやってきた。 私達は森の真ん中にいた私達は、なすすべなく大木の下で雨宿りをした。 農家の方が車を持って来てくれたが、みるみるうちにタイヤの半分くらいのところまで水がたまり、まったく動きが取れなくなってしまった。 それから30分後、雨がやみ、日射しが照りつけてきた。 さっきまでの浸水がウソのように、5分ほどで水が引いた。 灌漑設備など何もないジャングルの奥なのに、本当に良くできているなぁと関心した。 私達は、農家の方にお礼を言って、たくさんのマンゴスチンとランプータン、そして、森の中で偶然見つけたジャッカという果物(見た目はドリアンのようで、中の種の周りの果肉を食べる。味はバナナに似ている)をお土産に頂いて帰った。
by kobo_natsu_105
| 2005-08-06 21:08
| 旅日記
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